たかがカタログ雑誌、されど

 先週、カタログ「通販生活」で評判の枕を手に入れたことを書いたが、この「通販生活」、ただのカタログ雑誌と訳が違う。最新号の表紙をめくると「いまの『憲法改正国民投票法』はおカネのある改憲派に有利」と大きく見出し。9頁にわたってその特集が続く。「エッ、この雑誌、何なの?通信販売の雑誌じゃないの?」と思わず疑ってしまうほどである。表紙の最上段には「巨大地震はいつ来るかわからない、原発ゼロ今すぐ」のアピール。以前から原発廃止や平和憲法なども特集している。

 片手間ではないのだ。本気で取り組んでいるのが雑誌を読んでいると分かる。「何でこんなの、通販の雑誌に載せるの?」という素朴な疑問も出てくるが、それが会社の理念である。売らんがための雑誌ではないことがよく分かる。だから信用できる。

 そのような意味で、大変ユニークな雑誌といえば「暮らしの手帳」だろう。私は、兄の大学の先輩が「暮らしの手帖」社に入社した縁で、兄に勧められてしばらく購読していた。およそ50年前の話である。一貫した編集理念は、徹底した自前での商品テスト。そのために雑誌に広告を一切載せない。商品テストの実例として、こんな話を兄から聞いた。先輩に連れられて「暮らしの手帖」社に行った時、階段にカーペットが敷いてあったが、それも商品テストのためだと説明されたという。

 「暮らしの手帖」は来年、創刊70周年だが、一貫して訴えてきたのは「戦争反対」。これも出版理念だという。およそ半世紀前、戦時下の庶民がどう暮らし、何を食べ、何に苦しんだか、全国から寄せられた投書を編集した「戦争中の暮らしの記録」が特集として出され、90万部も売れ、当時話題になった。この特集号、よく覚えている。今度、同社は新たな「戦中・戦後の暮らしの記録」を出そうとしている、という記事が朝日新聞に載っていた。「今、時代の空気がとてもきな臭い。当時の生活のエピソードを積み重ねることで、戦争がどんなものかを伝えたい」とあった。

 ともに共通するのは、生活者の視点から世の中を見、生活者の立場で主張していることだろう。権力、お金におもねない。