含蓄のある言葉との出会い


 新聞や本を読んでいると時々、「う~ん、なるほど」と思わずうなったり、「そういう言い方や見方もあるんだ」と感心させられる含蓄のある言葉に出会うことがある。人生は出会いだというが、人物や出来事の出会いだけではなく、言葉との出会いはその人の人生や人格形成に多くの影響を与える。言葉の力だろう。

 先日も朝日新聞(9月27日夕刊)を読んでいて、「人は励まされるだけでは元気になれない」という言葉に出会った。元厚生労働事務次官の村木厚子さんが、さわやか福祉財団会長の堀田力さんから言われた言葉である。村木さんは厚生労働省の局長だった2009年、郵便不正事件で大阪地検特捜部に逮捕され164日間拘留された。拘置所では、「支える側」にいたと思っていた自分が一瞬で「支えられる側」に回る経験をした。この体験から、支援する人が受ける人の「自尊(プライド)の気持ち」を大切にできるかが重要だと分かったという。「『上から目線』の支援では、本当の意味の助けにはならない」ことも分かったという。確かに、私たちもホームレス支援や生活弱者、困窮者支援で最も気をつけていることである。支援する側とされる側に上下関係を作らない。同じ「いのち」を神さまからいただいたものとして接していくようにしている。

 村木さんは10年に無罪が確定。職場復帰の半年後に東日本大震災が起きた。さっそく、福島県の避難所に入ると、福島の人から「村木さんだ」「頑張ってね」と逆に励まされたという。その話を堀田さんに話すと、「被災した人たちは村木さんを励ますことができて、元気になったに違いない。人は励まされるだけでは元気になれない。いいことをしたね」と言われたそうだ。

 この堀田さんの言葉は、人は支え、支えられ、つながっていくことによって生きることができることを再認識させる。「お互いさま」の精神である。ヨハネの手紙一3章11節に「互いに愛し合うこと、これがあなたがたの初めから聞いている教え」とあり、18節に「言葉や口先だけではなく、行いをもって誠実に愛し合おう」と勧められている。