質問力

イエスは弟子たちや論敵に対して、たびたび質問を投げかけています。これは、ユダヤ教のラビたちが伝統的に採用していた教授法で、質問を投げかけることによって相手に「気づき」を与え、正しい答えに導こうとするものです。イエスの弟子訓練の方法は、まさに対話と質問によるものだったのです。

 そして今、イエスの教授法がビジネスの世界でも注目を浴びるようになってきました。米国では今までトップダウン経営が主流を占めていましたが、その限界が見え始め、大企業の経営者たちは、悩んでいました。部下に絶対服従を命じただけでは、業績が拡大しないのです。その時、悩める経営者たちが注目したのは、スポーツ選手の育成法でした。つまり彼らは、「スポーツコーチング」からヒントを得たのです。

 1970年代に米国で活躍したテニスコーチのティモシー・ガルウェイは、74年に画期的な本を著しました。それが、『インナーゲーム(The Inner Game of Tennis)』という本です。この本の中で彼は、「教える」よりは、「問いかけて気づかせる」方が効果的であると主張しました。「球をよく見ろ」と教える代わりに、「ネットを越える瞬間、ボールの回転はどうなっている?」と質問したのです。これは、別の見方でものを見ることを教えることによって、選手のやる気と興味を引き出すものです。

 ガルウェイの影響を受けて、スポーツ界には新しいコーチングの方法が広まっていきました。そしてついに、ビジネス界でもその手法を採用するようになったのです。つまり、従業員の「気づき」にもっと目を向けようという運動が広がっていったということです。

 聖書を読むときのヒントになります。字句通りに内容を理解するだけではなく、その御言葉に隠されている「真理(福音)」に気づかされていくことが大事です。そのために質問を考えてみましょう。質問が考えられれば、もう答えは見えてきます。