流す、流れる

ある本を読んでいたら、「お金って、貯めると腐りますね」という言葉に出会った(『星言葉』晴佐久昌英)。なるほど、そのとおり。金持ちほどケチだと言われているけれど、実際貯めれば貯めるほど使うのが惜しくなるらしい。貯めることに腐心し、減ることを恐れる。実際、昔、同僚の女の先生で「お金を貯めるのが趣味」と公言し、毎日通帳を眺めてニヤニヤしているという人がいた。そうなるとお金は手段ではなく目的となり、意義ある使い道がどんどん失われていく。使わないお金は、その人の心の中で腐り始めるのである。

  昔から「お金は天下の回りもの」という。お金は使ってなんぼ。使ってこそ、その価値が発揮される。物も同じ。どんな高価な物でもしまい込んだり飾っているだけではもったいない。よく「タンスの肥やし」と言われたりする。使ってこそである。物自身も「使って」と叫んでいることだろう。

  お金は上手に流せば流すほど生きてくる。新鮮なお金の流れるところには、活きのいい人が集まってくるという。お金は人と人を結び、そこに新たな夢や値打ちある活動が生まれ、文字通り「お金にはかえられない」何かが育っていく。「ドブに捨てる」ような使い方だけはやめよう。

  「流れる」ということはあらゆることの根本かもしれない。たとえば健康とは、身体の中にいい流れができている状態のことだ。血液の循環がいいと健康体だといわれる。脳波の流れも気の流れも同じ。身体に限らず、健康な組織、健康な社会、健康な経済、すべて人や物や情報が滞ることなく流れていることが理想なのである。

  何かうまくいかない時や心身が不健康だと感ずるときは、何がよどんでいるかを捜してみよう。運動不足なのか、情報の断絶なのか、金品の死蔵なのか、原因が分かれば解決したも同然。あとはそれを流してやるだけ。新鮮な風を取り込もう。与えられた賜物、恵みを惜しみなく主のために用いよう。