もの悲しいクリスマスプレゼントの思い出

クリスマスの季節になると時々思い出す。私が6歳の時。もう60年前の話だ。どこで知ったか、世の中にクリスマスという行事があり、サンタクロースという人が12月24日の夜中にそっとやって来て、よい子にプレゼントを持ってきてくれるというのだ。

 しかし、子ども心に考えてみても、今までそういうことはなかったし、兄や姉たち、まわりの友だちからもサンタさんからもらったという話は聞かない。だけど、親からクリスマスプレゼントをもらったという子が少数だがいた。非常にうらやましかった。おもちゃが欲しいというより、プレゼントをもらうという喜びを味わいたかったのだろう。

 当時の私の家庭は12月に入ると、お歳暮をどうする?大掃除は?いつ餅つきをする?お正月のおせちの準備は?年始回りは?と、もう母親は大変。毎年、母親は正月三ヶ日が過ぎると、疲れて寝込んでいたほどだった。だから、クリスマスプレゼントの話なんか持ち出せる雰囲気ではなかったし、当時の我が家にはクリスマスという行事はなかった。しかし、やっぱり25日の朝、目が覚めたら枕元におもちゃのプレゼントがあった、という感激を味わいたかった。

 そこで私は思いついた、自分で自分のプレゼントを用意することを。プレゼントは持っているおもちゃの中で一番好きなブリキの自動車。それを丁寧に包装紙に包んで、24日の夜、自分の枕元に置いた。そして布団の中で翌朝のことを想像しながら寝た。明日目が覚めたら、「わあー、サンタさんからのプレゼントだ!嬉しいな」と叫びながら、包み紙を開けようと。

 期待のクリスマスの朝が来た。枕元には確かにプレゼントがあった。自分で用意したプレゼント。中身は分かっている。「嬉しい!」と言って感激するつもりだったが、子ども心に何かもの悲しくて、空しかった。プレゼントは開けられるまでもなく、そこに置かれたままだった。

 プレゼントはやっぱりもらうもの。クリスマスの喜びを多くの人にプレゼントしよう。