排除と包摂


 私たち日本バプテスト連盟の国際ミッションボランティアとしてルワンダで「和解と平和の構築」に取り組んでおられる佐々木和之さんのことはよく知っているが、世界を舞台に同じような働きをしておられる日本人は少ないがおられる。

 その一人が東 大作さん(上智大学教授)。新聞で紹介されていた(2018年6月23日版)。シリア、イラク、南スーダンなど、戦いで荒れ果てた国に、平和で穏やかな生活を取り戻す平和構築に関わり、具体的な政策提言を続けている。原点は、両親の広島の被爆体験をきっかけに、平和に貢献する仕事につくのが幼いころからの夢だったという。

 徹底した現場主義。掲げる主張は一貫している。国民から信用され争いが再発しない政府を作るには、特定の政治勢力を排除せず、可能な限り広範な集団が参加する「包摂性」を保つことが重要だと言う。「包摂」とは「広い概念が、より狭い概念のものを包み込むこと」と辞書にある。例文として「ヒトは哺乳類に包摂される」と出ていた。少数民族も反政府勢力も排除しない。同じテーブルに着かせて、対立する人々に対話を呼びかけ、促す。そして話し合いを重ねていく中で和解を作り出していく。書くと簡単に思えるが、そこには信頼関係を作りながら、粘り強く対話を促していく努力が求められる。対話は和解の第一歩。そして継続は力なり。

 東さんは次のように言っている。「平和国家日本の信用は高く、日本の主張には素直に耳を傾けてくれる。日本は、対立する集団同士の対話の促進役という新しい役割を果たすべきです」。しかし、膨大な負担金を払いつつ、紛争地の国連の平和維持活動などに日本人の上級職員が極端に少ないと、嘆いておられる。

 敗戦後73年間、日本は海外で一人も殺さず、殺されていない歴史を持つ。平和憲法を掲げる日本。さらに、敗戦の荒廃から飛躍的な復興、高度経済成長した日本。高品質な電化製品、自動車をはじめとするモノづくりにたけた日本。最近ではアニメや和食が世界中で評判が高い。海外からの観光客が驚く安心・安全な日本。今後は世界平和構築に貢献する若い人材を育てたい。