ふうけもん

先週、映画『ふうけもん』を観てきた。「ふうけもん」とは、佐賀弁でバカ者、はみ出し者のことだそうだ。この映画は元祖便利屋の右近勝吉さんの実話を映画化したもの。

 モデルの右近さんはクリスチャンである。右近さんは1940年に佐賀県で生まれた。中学生のときにヤクザの世界に入り、新宿で毎日ケンカに明け暮れていた。しかし、ある日、道ばたで笑顔が素敵な宣教師に出会い、その笑顔見たさに教会に入り浸るようになり、やがてヤクザから足を洗って、洗礼を受けた。その後、紆余曲折はあったが38歳で心機一転、世間の雑用代行業=便利屋を始めた。

 便利屋を始めて5~6年たった頃だと思うが、右近さんを特別伝道集会にお呼びしたことがあった(経堂バプテスト教会)。集会後の雑談で、「今、私は自主的に日曜日の朝、教会の玄関から表を眺めながら来られる方を迎える奉仕をしています」と言われたことが忘れられない。受付の担当でもないのにである。あのニコニコした丸顔で迎えられるとホッとするだろうな、と思った。

 右近さんは「自分は凡人だから、自分の出来ることは何でもやろうと便利屋になった」と言う。また、右近さんは、「自分が凡人だということから始めれば、現状を肯定することができる。そして、いま目の前にある仕事に誠実に向き合うことが出来るようになる。それだけでも、いい仕事ができるようになる」と言う。さらに、「凡人に徹しなさい。そうすれば絶対に成功するから」とも言われる。これぞ「凡人力」。プライドを捨てられるか。

 さて、映画『ふうけもん』だが、監督は『釣りバカ日誌』シリーズの栗山富夫で、主演は中村雅俊、妻役に浅野ゆう子、その他中村玉緒など豪華実力派キャストである。映画は右近さんの人生を振り返りながら、便利屋家業を通してみえる、家族とは、友情とは、信頼とは、ゆるしとはといった根源的なテーマが織り込まれている。テンポよく展開し、個性ある俳優の演技も相まって、あっという間の2時間だった。

 この映画は諸事情によって一般公開上映ができなくなり、今、各地のホールなどで、日本縦断上映の旅と称して、北海道から南下して沖縄まで自主上映している。詳しくは「ふうけもん」で検索してみてください。