人間力

「就職活動」を略して「就活」。それをまねて何でも「○活」と名付けることがはやっている。「婚活」「終活」など。同じように「政治力」「経済力」「生産力」などと使われている「力」を、「○○力」とネーミングして、ある事柄を考察してみるという手法がある。そういう私も、この欄で「質問力」だとか「対話力」などと、いくつか話題にしたことがある。今回は「人間力」。

 皆さんは「人間力」と聞くとどんな「力」やイメージを持ちますか。私はまず「生きる力」と定義したい。そのための「体力」「知力(学力)」「精神力(心)」かな?と考える。「心・技・体」という言葉もある。

 人間力戦略研究会の座長であった東京大学教授の市川伸一氏は「人間力に関する確立された定義は必ずしもないが、本報告では、社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力と定義したい」と述べ、さらに「この定義は、多分にあいまいさを含んでいる」とも報告している。確かにあいまいで抽象的である。

 ここにホスピス医の柏木哲夫医師(淀川キリスト教病院理事長)が考える「ケア」を提供するための「人間力」について書かれたものがある(「いのちのことば」2015年9月号24-25p)。10ほどあげられている。
 
 ①「聴く力」 ②「共感する力」 ③「受け入れる力」 ④「思いやる力」 ⑤「理解する力」 ⑥「耐える力」 ⑦「引き受ける力」 ⑧「寛容な力」 ⑨「存在する力」。この言葉は聞きなれないので柏木先生の説明を加える。「存在する力とは、逃げ出さないという意味であり、自分は逃げずに、このことに関して一緒に考える。何かあればいつでも呼んでください、ということです」。「いっしょに、共に」である。 ⑩「ユーモアの力」。

 以上ですが、どれも難しいことばかりです。でも、意識して心がけていくことが「力」をつけていくことになると信じます。