プロセスが大事

朝日新聞夕刊に「一語一会」という週一回の連載がある。掲載された人が出会って大事にしている「一語」の紹介。先週は谷口真由美さん(大阪国際大学准教授)が、父・龍平さんから聞かされた言葉。

  龍平さんは元近鉄ラグビー部のコーチ。どれだけ努力しても、結果が出ない場合もある。試合に出られなくても、勝ちに結びつけられなくても、努力した過程をちゃんと見てやることが指導者の務めだという父。そんな父親が娘に「結果は大事やけど、プロセスはもっと大事や」と常に言って聞かせたという。

  谷口さんは選手寮に住み込んだ両親と共に選手たちと共同生活をした経験を持つ。「努力しても報われない人、ケガで泣いて辞めていった人をいっぱい見てきました。父も私も、そんな選手たち一人ひとりのことを決して忘れません」と言われる。弱い立場の人を考えるようになった彼女の原体験だろう。

  自分自身を振り返っても、努力したからといって結果がついてくるとは限らないことはよく分かる。逆に言えば、結果が出せなかった人がみな努力を怠ったわけではない。でも、最近「成果主義」や「自己責任」が強く言われるような風潮がある。若い人たちを過労死まで追いつめる社会はどこか変だ。「逃げてもいいんだよ」「助けてと言おう」と言いたい。

  父・龍平さんの次の言葉もぐっとくる。「弱い人間も、いろいろあんねん」。そう、いろいろある。ホームレス支援や社会的弱者の方たちの支援をしていて本当にそう思わされる。結果だけ見てあれこれ言うのはやめたい。娘の谷口さんも「弱い立場の人、ほっとかない」と言う。

  プロセスは大事。プロセス(過程)こそ人生を造り上げる。道程こそ人生そのもの。聖書は私たちを神の国に向かう途上の旅人だという。そしてその途上をどう生きるのか、生きたのかを聖書は問う。同時に聖書の神は、その途上の旅人である私たちと共に歩んでくださる。