昨年のクリスマスの日(12月25日)、朝日新聞一面のコラム「折々のことば」(鷲田清一)に「God be with you till we meet again」讃美歌405番が取り
上げられていた。これは「神ともにいまして」という題でよく知られている。さっそく当日のクリスマス礼拝の説教でこのコラムのことを話したので重複する部分があるが紹介したい。
この讃美歌は米国の牧師ジェルマイヤ・E・ランキン(1828-1904)が1880年に作詞したものだ。本来送別の歌なのだが、日本の教会では葬儀の時によく歌われる。でも、かつては同信の友や家族が地方から上京する時など、駅のホームで歌って見送ったという。
「送別の歌なのに長調なのが不思議だった」とあり、今まで気にもしなかったが、言われてみれば短調ではなく長調である。しかし、作られた米国では、繰り返しの部分が、情感深く、極めて感傷的に歌われたため、歌集から削除されたり、繰り返しの部分が省略されたり、曲を変更されたりしたという。だが、抗議の声が多くあり、原曲に戻されたという逸話もある。
「送別の歌なのに長調なのが不思議だったが、悲しみの淵に沈む人を支えられるのは、信仰と希望と連帯だからだろう」とある。確かにそうだ。しかし、「信仰と希望と…」とくれば、次は「愛」だろうと思ったが(第一コリント13:13)、「連帯」も悪くない。「神ともにいます」はヘブライ語で「インマヌエル」(イザヤ7:14、マタイ1:23)で、愛の神の本質を言い表しているからだ。愛の具体的なあり方のひとつは共に生きる、寄り添う、連帯である。
鷲田氏はさらに「英語のGoodbyeはこのGod be with youが縮まったもの」であったと書いているが、確かに作詞者ランキンはそのことをふまえ、その言葉の意味を丹念に考えながら作詞したと伝えられている。ヘブライ語の「シャローム」は「神の平安があなたに」という意味だが、それが今でも挨拶語として使われていることもあわせて紹介したい。
*『讃美歌略解』(日本基督教団出版局1954)と『讃美歌21略解』を参考にしました。