クリスマスの定番にはいろいろある。プレゼントにサンタさん、ケーキにツリー、最近はイルミネーション。アドベント・クランツやリース、クリスマスカードもある。最近では歳末大売り出しより、クリスマス・セールが流行る。
そのクリスマスツリーだが、由来はご存じだろうか。722年の12月24日。英国生まれの伝道者ウィンフリッド(後にボニファチウスと改名し「ドイツの使徒」と呼ばれた)がドイツのザクセンに福音を伝えて旅していた時のこと。暗い森の中であかあかと火を燃やし、村の人々がユールタイト(冬至祭)の儀式をしているのに出会った。
大きな樫の木をとりまき、この木に宿る雷と戦いの神トールに馬を捧げるのだが、その年は不作とはやり病いに見舞われたので、トールの神の怒りを鎮めようと、酋長のひとり息子をいけにえに捧げることになったのだという。
あやしげな神官が少年を祭壇にひきたて、ひざまずかせて、その頭上に黒い槌を振り下ろそうとした瞬間、ウィンフリッドの杖が、それをくいとめた。
怒り狂い、このよそ者に罰を下してくれと樫の木に向かって祈る神官を後目に、ウィンフリッドは斧を持ってこさせ、コーンコーンと樫の木を切り倒してしまった。
「これはただの材木です。真の神イエス・キリストのためにここに教会を建てましょう」。
ウィンフリッドは聖書を取り出し、息をのんで見守っている人々に福音を伝えた。そうしながら、ふと倒された大木のかたわらを見ると、小さな青々としたもみの若木があった。「このもみの木は生きている。これこそあなたがたの新しい信仰のあかしだ」。
村人たちの心は次第に動かされ、小さなもみの木に感動を覚えた。ウィンフリッドを先頭に酋長の家にもみの木を運び、居間に美しく飾り、救い主の降誕の話を聞き、彼らにとって初めてのクリスマスを祝った。それがドイツ中に広まり、いまや全世界のクリスマス・シーズンを楽しく彩るものとなったのである。