著名人の言葉で考える

 著名人の言葉を引用しながら、自分の考えをまとめていく。そのような記事を見かけた。4月29日朝日新聞、編集委員の福島申二氏の「日曜に想う」だ。

 冒頭は昭和映画の巨匠小津安二郎の言葉。「人間は少しぐらい品行は悪くてもいいが、品格は良くなければいけないよ」。これは小津が人を見る基本であったらしい。「品行は直せても品性は直せない」とも小津はしばしば口にしていたという。

 小津が示した人間像を作家の城山三郎の小説のタイトル「粗にして野だが卑ではない」を引用して補足説明。さらに城山氏の言葉を引用して何が言いたいかまとめる。「見るからに卑のにじむ人がいますが、そういう人に限って美学とか矜持とかいう言葉を好んで口にしたがるようです」。この記事の見出しは「政官中枢 荒んだ『卑』の景色」。何を言わんかよく分かる。

 我が国の政官中枢の今の景色を「国民は自分たちの程度に見合う政府しか持てない」という議会制民主主義の本場英国の警句「この国民にしてこの政府」の言葉に照らして見たとき、私たちはこのレベルなのかとげんなりさせられると嘆く。

 次に明治の文豪徳富蘆花の言葉「言を弾丸にたとえるなら、信用は火薬だ」を引用。火薬がなければ弾丸は透(とお)らない。すなわち言葉は相手に届かない。「信なくば立たず」である。安倍首相の「しっかり、丁寧に、謙虚、真摯、うみを出し切る」の常套句はもはや国民に届いていく力を失っていると断じる。

 最後に非暴力抵抗を説いたインド独立の父ガンジーの言葉を引用。「立派な運動はいずれも、無関心、嘲笑、非難、抑圧、尊敬という五つの段階を経るものである」というガンジーの言葉は、理不尽とたたかい抜いた人の不屈の意志を示すだろう。それとともに、たたかう人々を勇気づける。♯MeTooを合言葉にセクハラ根絶を訴える運動が、早く尊敬を勝ち取る時が来ることを願うと書く。ガンジーを精神的に支えた詩聖タゴールの言葉「人間の歴史は、侮辱された人間が勝利する日を、辛抱強く待っている」を引用して希望につなげている。