二つの時の物語

時間を手中にした聖人、詩人、学者、賢人、哲学者たちは何世紀にもわたって時の謎について思索してきました。そして時の二重性を見つけました。彫刻家で詩人のヘンリー・ヴァン・ダイクは次のように説明します。「時は/待つ者には遅すぎる/恐れる者には速すぎる/悲しむ者には長すぎる/喜ぶ者には短すぎる……」。

 生きている日々に心の平安を得るためには、時の二重性、ギリシャ語でクロノスとカイロスと呼ばれているものを知らなければなりません。

 クロノスは時計、締め切り、カレンダー、スケジュールです。クロノスは追いかけます。クロノスは電車に乗り遅れないように老人が階段を駈け上がるようなものです。クロノスは自分のことしか考えません。待ってくれません。クロノスはこの世の時間です。

 カイロスは超越、無限、崇拝、喜び、情熱、愛、神聖です。カイロスは自由にします。カイロスでは闇のトンネルから抜け出せます。カイロスは大いなる存在(神)の時間です。

 私たちはクロノスの時間を生きています。そしてカイロスを憧れます。それが私たちの二重性です。クロノスは無駄に費やされないようにスピードを求めます。カイロスはゆっくりと体験できるように空間を求めます。クロノスで私たちは行動します。カイロスで私たちは存在するのを許されます。

 カイロスなんて経験したことがないと思うかもしれません。しかし、私たちはそれを知っています。愛しあうとき、瞑想したり祈るとき、音楽や文学作品に感動するとき、夕焼けに心静まるとき、情熱がほとばしり出るとき、そんなときがそうなのです。あなたにとってかけがえのないとき、時を忘れるようなときがそうなのです。

 私たちはカイロスで喜びを知り、カイロスで美を見い出し、カイロスで生きていることの素晴らしさを覚え、カイロスで神とつながるのです。自分の生活の中でカイロス(神の時)を持ちましょう。クロノスだけでは生きる喜びはありません。礼拝の時はカイロスです。