そば屋のバイトの思い出

年のせいか、最近昔のことをよく思い出す。今日は40年以上前の話である。大学時代に掛け持ちでアルバイトをしたことが一度だけある。一つは朝の8時から午後2時まで。築地にある魚問屋。次は5時から9時まで、新橋のおそば屋さん。その間は喫茶店で読書して暇つぶし。そのお店は道路一本隔てて向かいは銀座8丁目。夕方6時頃になると銀座のホステスさんたちが出勤前の食事に大勢やって来た。頭はアップにした髪型できれいにお化粧して、もちろん高級な和服姿。このお蕎麦屋さんでの忘れられないエピソードが三つある。

 一つは、お客のホステスさんの和服にそばのつゆをこぼしてしまったこと。アッと思ったがもう遅い。覆水盆に戻らず。しかし、そのホステスさん、少しも騒がず、さっとハンカチを取り出してふきとって、「いいのよ」とか何か言って私をとがめず、何事もなかったかのようにおそばを食べて出て行った。出ていく後姿に、おう!さすが銀座のホステス!と驚嘆して見送っている私がいた。

 二つ目。その日はお客が多くて忙しかった。その時、若い女店員がベテランの調理人に、「手伝おうか。それくらい私もできるから」と言った。すると、そのおやじさん、持っていた鍋を床に叩き落として出て行ってしまった。その瞬間、店の中は凍り付いたような空気が流れた。小娘の一言がおやじさんの職人としてのプライドを傷つけてしまったのだ。

 三つ目。社長がある日、私に新しく店をやるが、そこを任せるがやらないかと持ち掛けてきた。仕事はこれから教える、心配いらない。卒業後の進路は決まっているかと聞いてきた。まだないと言うと、今すぐ学校をやめて、この会社でやらないかと誘う。大学だけは卒業しろと言うのがおやじの遺言だと言うと、残念そうな顔をして、それ以上何も言わなかった。当時は高度経済成長時代、仕事はいくらでもあった。今では夢のような話である。

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