流す

ある映画監督が「お金って、貯めると腐りますね」と言ったという。そのとおり。金持ちほどケチだというけれど、実際貯めれば貯めるほど、使うのが惜しくなるようだ。貯めることに腐心し、減ることを恐れるのだろう。そうなるとお金は手段ではなく目的となり、意義ある使い道がどんどん失われていく。使わないお金は、その人の心の中で腐り始める。

  「お金は天下の回り物」「お金は使ってなんぼ」と昔から言われている。お金は上手に流すほど生きてくる。新鮮なお金の流れるところには、活きのいい人が集まってくる。お金は人と人を結び、そこに新たな夢や値打ちある活動が生まれ、文字通り「お金に代えられない」何かが育っていく。生きたお金の使い道を考えたい。

  お金の流れに限らない。たまるだけの湖、死海は魚が住めなくなり、流れ込んだ水が流れ出ていく湖、ガリラヤ湖は豊富な漁場。身体も同じ。血流をはじめ、循環するすべての要素が気持ちよく流れると健康体。汗を流す、呼吸、お通じ、脳波の流れ、気の流れなどなど。

  それは組織、社会、経済にも言える。健康な組織、健康な社会、健康な経済、すべて人や物や情報が滞ることなくさらさらと流れていることが重要だ。身も心も物も情報も意識して流していかないと、どんよりしたものとなる。教会も一つの組織、同じことが言えるだろう。

  何かうまくいかない時や、心身や組織が不健康だと感ずるときは、何かがよどんでいる。運動不足なのか情報の断絶なのか、金品の死蔵なのか、活動の停滞なのか、マンネリなのか、原因が見つかれば解決も早い。あとはそれを流してやるだけ。

  流す楽しさ、気持ちよさを知った人はまことに自由闊達、やがて自分が、大きな潮流(全宇宙または歴史の流れと言ってもいい)の一部であることに目覚めていくだろう。