「ひだまり」の支援を通して見えること

目になる支援活動を通して見えたことなどを仲間のSさんに語ってもらった。

  「ひだまり」は多くの人に利用され、生活保護の受給や住まいの確保など基本的な支援はうまくいくようになってきました。しかし、生活保護から脱して経済的自立をしていくための支援(就労支援など)となるとなかなかうまくいきません。あと一歩のところでダメになってしまうことが度々です。精神的な病気やアルコール、ギャンブルの依存症などは自立の大きな阻害因子ですが、原因が見えにくいことも多く、一人ひとりの思いを理解するのは大変時間がかかります。社会の中で生きにくいだろうなと感じる人もいますが、それなりの年齢まで社会の中で、自分の価値観と技量で生き抜いてきたのですから、突然私たちの価値観を押し付けて支援しようとしても限界があることは容易に理解できます。

  そうした人たちと話をする中で気になっているのは、出会う人たちの多くが貧困や家族関係の崩壊などで大変つらい幼少期を過ごしていることです。学校に行けなかった人、父親がアルコール依存症で暴力を受けていた人、母親が家出してしまった人、生まれた場所も親も分からないで養護施設で育った人など様々です。そうした人の中にはせっかく職業訓練を受け、免許が取れても、いざ就職となると二の足を踏んでしまう人、生きる目的が見つけられず、自分を大切にできず、就労意欲もない人が見受けられます。

  生きてはいるがこの人は自分の存在を肯定し自信を持つことができないし、他者を認めることも出来ないのだろうと考えてしまうことがあります。幼少期に自分を愛し存在を認めてくれる人がいたかどうかがその後の人生に影響を与えることがあるのではないでしょうか。経済的貧困だけでなく、心の貧困の連鎖を断つためには成人してからでは間に合わない。幼少期から平等で細やかな社会的支援が必要だろうと考えます。<後略>